それでも自分であるということ2

小説

続き物です。先に「それでも自分あるということ」を読んだほうが楽しめます!

「う、うわ~、落ちる」

『落ちてないだろ? お前は馬鹿だ』

「あ、確かにそうだ。落ちてない。でも、足元が少し不安定だ」

『わしがお前を宙に浮かしている状態だからな』

「じゃあ、じゃあ、ここは空中だってのか? でも、下の方は全然見えない」

『かなり高度が高いからな。お前の目では見えないだろう』

 そう、誰かも分からない頭の中に響く声が言ったかと思ったら、急に俺の体は落下し始めた。

 俺の体は下を向いた状態だ。つまり、地面に対してうつ伏せのようになっている。風が強すぎてうまく息ができない。言葉を発することもできない。これは、よくスカイダイビングとかでやるフリーホールの落下ってやつだ。

 お、俺、このまま死ぬのかもしれない。こんな高いところから落ちたら、俺の体はきっとぐしゃぐしゃだ。い、嫌だ!! そんなの嫌だ!!

 俺の中に何か変な感覚が走った。そう思ったら、俺の体は再び宙に浮いていた。さっきと違うのは、うつ伏せの状態はそのままで、俺の落下だけが止まったということだった。

 俺の真下の少し先は、雲海が広がっていた。太陽の光がその上に降り注いでいて、すごく神秘的な光景だった。その光景に、俺は少しだけ目を奪われる。こんな訳のわからない状況なのに、俺って案外図太い。

『やはり止めたか』

 また、頭の中に直接声が聞こえてきた。

「お前の仕業だろ? いきなり落とすなんて卑怯だぞ! いい加減に俺の家に戻せ」

 この夢が早く覚めてくれるのでも構わない。目を覚ますことができたら、勉強もサボらずにする。少しムカついても、誰もいじめたりしない。そう、俺はきっと改心する。だから、早く目が覚めろ!

『分かっているのだろ? これが夢ではないことを。儂は落としたわけではないが、お前を宙に浮かばせておくことを止めただけだ。それをお前は自分で止めた』

「自分でとめたって? じゃあ、何か? 俺は今自分で浮かんでいるってことなのか?」

『そうだ。それが証拠に、お前はまた落ちる。自分で浮かんでいることに気がついたせいでな』

「なっ! お前が」

 そう言いかけてたけど、俺の身体がまた急に落下を始めた。やっぱり凄い風を受けているから、うまく呼吸もできない。少し口を開けると、口の中一杯に空気が入り込んでくる。

『儂の言った通りだ』

 頭の中に聞こえてくる声に対して反論すらできない。

 俺の体はすぐに雲の中に入り込んだ。雲の中は全く何も見えない。少し湿った感じのものがまとわりついてくるようだった。

 でも、それもすぐに終わって、雲の中を抜けた。すると、かなり地面が迫っていた。と、言ってもまだ随分高いが、この落下速度ではすぐに地面に激突するのは明らかだった。

 嫌だ、嫌だ。このまま落ちて死ぬのは!!

『待て!』

 頭の中の声がそう言ったかと思うと、地面から100mくらいのところで俺の体は宙に浮いた。今度は、うつ伏せの状態でもなく、起き上がった状態だ。地面は俺の足元の下の方にある。

「さっきから、何してくれんだ! 落としたり浮かばせたり、俺はおもちゃじゃない」

『お前の様子を確認したかっただけだ。まあ、全ては予想通りであり、またそうでもなかった』

「お前、頭がおかしいのか? 意味分からない」

 俺がそう言い終わると、ゆっくりな速度で俺の体は下へ降りて行った。そして、そのまま俺の足は地面に着地した。

 辺りには何もない。草一本生えていない。ただ土の地面がずっと続いているだけだった。

「ここはいったいどこだ?」

『ここは、お前がいた家と全く反対側だ。少し、適当にしすぎたが、これはこれでいい』

 俺は辺りを見回した。やっぱり本当に何もない。誰もいない。そう、俺だけが今この場所にいる。でも、もっと先へ行けば誰かがいるかもしれない。何かがあるかもしれない。

「俺の家の反対側って———意味分からないこと言いやがって。つまり地球の裏側とでもいいたいのか?」

 俺は、そう言いながら歩き出した。あまりにも長い距離だったら歩いてたどりつけないかもしれない。本当にいったい何が起こっているんだ⁉

 地球の裏側ってことは、南アメリカあたりか? 中学のとき、先生が言っていたな………確か、ウルグアイじゃなかったっけか?

 日は傾きかけていた。もうじき静んでしまう。明るいうちにこの場所を抜けることはできないかもしれない。

 俺の中に不安が湧いてくる。

「そう言えば、さっきまでの声が頭に響いてこない? 何でだ?」

 俺は、不安を払拭するように独り言をつぶやき始めた。そもそも、この夢はいっこうに覚めることもない。

 ふっと、何かの感覚が俺の中を通り過ぎていった。

「あ…………ああ……ああああああ………………」

 その感覚は俺にいろいろなことを気づかせた。俺は何も分からないはずなのに、いろいろ分かってしまった。

 俺は立ち止まってうつむいた状態で、叫び続ける。

「嘘だ! 嘘だ!! そんなことがあるはずがない。絶対に何かの間違いだ」

 でも、本当は分かっていた。間違いでもないってことを。何故鮮明に分かることができるのかは、分からなかった。ただ、今のこの状況だけは分かった。これは俺がやったことだった。

「俺が、俺が、俺が————俺が壊した————何もかも全部だ!」

俺はうつむきながら頭を何度も振った。こんなこと感じたくなかった。分かりたくなかった。

「そうだ、違うんだ。あの声のやつが俺に何かをしたんだ。それで、俺は現実だって思う様になって————それで――――でも、いったい————だから何だ? これからなんだ? 何がなんだ?? いったい————」

「違う、違う違う違う違う違う! そうだ、桃花は巻き込まれていなかったはずだ。あいつは、そう、あいつは家にいなかったから—————」

 身の毛がよだつようだった。何に??? 自分に?? この状況に————。

「うわあ――――――」

 俺は、走り出した。無我夢中で走り出した。何処にいっていいのか分からない。何をしていいのか分からない。でも、ここからとにかく抜け出したい。

「うあっ!!」

 大きな亀裂のようなものが地面にあって、俺はそこに落ちた。亀裂? いや、穴だったのかもしれない? とにかく俺は落ちて、そして意識を失うことができた。

続きは一週間後あたりにまたこのブログに投稿します。お楽しみに!

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