まだ先の未来の夢

kindleの小説出版

 いつもと変わらない教室。退屈な授業…………はあ~、もっとうまい教え方がきっとあるだろう? この化学の先生は教え方が下手だ。
 二学期になったばかりの教室は、エアコンのおかげで涼しくはなっているが、どうしようもなく気だるい。
 そうだ、僕は学校なんか嫌いだ。そもそも、授業で習うのは僕が既に知っていることばかりだ。でも、授業中はまだましだ。きついのは、他の時間————それにもだいぶ慣れてきた。まるで気配を消すように静かにしていればいい。後藤が一括してくれたおかげで、僕の背中を的当てにしていた奴はいなくなったし、誰も僕に関心を寄せてこない。だから、そう言う意味では楽だ。でも、ときどき汚いモノ扱いされるときはある。
 高卒認定を受けることも考えた。でも、お祖母ちゃんとの約束があるから、僕はその為だけに学校へ通っているにすぎない。

 うっ!

 なんだ? 突然嫌な感じがした—————。
 僕が、そう感じた次の瞬間には、僕は教室にいなかった。
 ここは⁉ ここは—————かなり高い上空だ。随分下の方に町が見える。教室にあったもの、いたもの、その全てが急に上空に放り出された。みんな言葉を失っている。でも、今の状態は床があったときのようだ。僕たちは、教室にいたときのそのままの状態で、放り出された。まるで、教室内の床や壁に天井、窓から見える景色だけが上空を映し出しただけみたいだ。足元は、さっき床の上にあった感覚と変わらない。
「いやー、何これ⁉」
 誰かが、女子が叫んだ。その瞬間に僕たちの落下が始まった。でも、僕達だけで、教室にあったものは、ふっと消えていった。
 僕たちはすごい速度で落下をしていく。声なんて出せるはずもない。口を開けたら空気が口中に入ってきて、頬が膨らむ。上唇がめくれ上がっている奴もいる。態勢も、うつ伏せの奴、仰向けの奴、回転している奴、みんな様々だ。
 悟、樹!
 僕は、悟と樹の二人を探す。あれ? でも、何でだ?? そもそもこの二人の名前を僕は何故思い浮かべた。この二人だけ特別みたいに心配している。
 それでも、僕はこの二人を探す。
 いた!
 二人は別々の場所にいた。僕はまず僕の近くにいる悟の元へ行こうとする。行くってどうやって? 
 僕の思考は僕に対して疑問を投げかける。それでも、僕の身体は勝手に動く。悟の方へ頭を向けると、両腕を真っ直ぐに横につけて足も伸ばす。すると、僕の身体は真っ直ぐに勢いよく悟の元へ向かう。
 悟! 悟の元まで行って、僕は手を伸ばす。でも、その瞬間に悟は消えてしまった。僕は、すぐに樹の方を見る。でも、樹もその姿を消している。
 それなのに、他のクラスメイトはみんな僕と同じ様に落下をし続けている。ただ、その中にさくらだけは何故かいなかった。
 おかしい、授業は一緒に受けていたはずなのに…………。
 僕たちは、そのまま落下をし続ける。こんな訳の分からない状況なのに、僕は何故か全く恐怖を感じていない。
 僕はおかしくなったのか? だって、このままいったら絶対に死ぬのに。クラスメイトのやつらとは関わりたくない。だから、一緒に死ぬなんてごめんだ—————そう、だから、助けなきゃ。
 僕に助ける術があるはずないのに、僕は再び身体を動かす。だいたい、何でこうすれば移動することを僕は知っているのだろう?
 不思議なことに、誰かを掴もうとすると、そいつは僕の目の前から消える。それが助かることにつながるかどうかも分からないけど、僕は夢中でクラスメイトを掴もうとする。
 でも、間に合わない—————僕も、他の奴らも地面に叩きつけられる——————僕は、かなり地面が近づいてきたときに目を瞑った。

 あ、危ない!
 そう思うのとほぼ同時に、僕の身体は動き出す。スーツを着た僕の親と同じくらいの年齢の男の人の元へ斧が飛んでいく。これは、僕の元へ飛んできたから僕が怪物の方へはじいたものだ。だけど、怪物は、それを自分の腕ではじきかえした。はじかれた斧は、運の悪い男の人の元をめがけていた。
 そう、僕は誰かを————そう、さくらを守るために戦っている。さくらが怪物に襲われているから、僕はその怪物と戦っている。
 怪物の体は硬かった。背中から翼のようなものも生えていて、太い尻尾があって、でも大きさは人とたいして変わらない。頭から二本の大きな角が生えていて、口は犬とかみたいに突き出ていて牙もあった。片手に斧を片手に剣を持っていた。僕は、そんな怪物とさくらの他にも何人か人がいる場所で戦わなくてはいけなかった。
 でも、できるなら誰も怪我させたくない—————誰も、怪物に被害に遭わせたくない。
 突然、キーンという耳鳴りがした。これは、何かに———誰かに勝手に何処かに連れていかれる前兆だと僕は察した。
 それに、抗おうかと一瞬思ったけど、いったい何処へ連れていかれるのかという興味も湧いてしまった。
 あれ? 僕は、戦っていたんじゃなかったっけ? でも、周りには誰もいないし、何もない。この、空間がいったい何処なのか分からない。だって、何も見えないから。
 僕は、異常な力を見につけてしまっている。別に僕が望んだわけではない。それでも、この力にはかなり助けてもらっているし、もしも今この力が無くなったら、きっと僕はどうしていいのか分からないだろう。
 キーンという耳鳴りが、急に強くなってきた。もはや頭痛も伴っている。こなってくると、僕に対しての干渉を切りたくなってくる。自分の手足を動かす必要すらない。ちょっとした意識の在り方でこの干渉を簡単に切ることが今の僕ならできる。そう、これくらいの干渉なら—————でも、鍛錬の場所へ連れて行かれることを阻止することは、まだ僕にはできない。

 僕が、何かからの干渉を切ってしまおうかと思った次の瞬間に、僕は別の場所にいた。
 僕は空にいた。空気が薄いから、かなりの高度の場所ではないかと思った。下を見てみると、川や街並みが見える。その見え方でも、かなりの高度の上空にいると分かる。大きなビルなんかが無いように見えるから、都心ではないのかもしれない。
 僕の身体は当然、下へ落ちて行く。前にスカイダイビングの映像を見たことがあるけど、いろんな態勢をとっていた。でも、基本は地上と平行であるうつ伏せ状態らしい。
 僕は、頭が下で落ちていたけど、スカイダイビングで見た映像を思い出して姿勢を真似てみた。両手肘を軽くまげて頭の方へ出す。腰を前に出した状態で膝を曲げてみる。すると、頭から落ちていたはずの身体はうつ伏せなった。正確に言うと、上半身が少し反り気味だ。
 ああ、そうだ————僕は映像を見たから移動の仕方も知っていたんだ—————でも、さっきは怪物と戦っていた。その前は————僕はクラスメイトと一緒に落下していて、地面に激突する寸前だった。でも……………記憶が曖昧だ。
 僕なら、クラスメイト全部を助けることも可能だ。でも、今落下しているのは僕独りだ—————僕はいったいどこへ落ちて行くのだろう? さっき僕に干渉してきた奴は、何だったのだろう? いや、その前から僕に干渉してきているのか? もしかしてルオ? あれ? ルオって誰だっけ??
 これ以上落ちて行くわけにはいかない。だって、ここは空でもない————いったいここは何処だ⁉ ああ、誰かが助けてくれないかな? こんないろんな色が混ざったような訳の分からない空間に僕はいたくない。
 誰かに助けてほしい————悟はいないの? 樹は? 身体も動かせなくなっているし、さっきからずっと誰かに、何かに見られている気がして怖い————助けて、誰か助けて。でも、誰も助けてくれることなんてないって分かっている。
 それでも、僕は助けたい。

 気がつくと、僕は自分の部屋のベッドにいた。猫のミャアが外側から僕の部屋の扉をカリカリやっている。きっと中に入りたいのだろう。いつもは、ミャアが自由に出入りできるように扉が閉まらないようにしている。でも、ドアストッパーが外れてしまったみたいだ。
 僕は、起き上がって扉を開ける。ミャアが中に入ってきて、いつもの所定の位置で寝転がり始めた。ミャアの為のクッションが置いてある場所だ。
「何か、すごく変で嫌な夢を見ていた様な気がする……………でも、全然覚えていない」
 僕は汗をかいていた。今は七月だけど、エアコンをつけていたから、部屋の中は快適な温度に保たれているはずだ。
「気持ち悪いや」
 まだ外は暗い。夜が明けていない。朝が来たら学校へいかなくちゃいけない。本当にうんざりする。それでも、僕はお祖母ちゃんとの約束を守る為だけに学校へ行く。でも、あと一週間もしないで夏休みになるから、そうしたらしばらくは学校へ行かなくていい。
 まだ、高校一年生の僕は、まだまだ長い時間を学校へ通わなくてはいけない。
 僕は、とりあえず目が覚めてしまったのでシャワーを浴びることにした。

https://00m.in/Mfhno ←「僕の心臓が動いていることと、ラウラスに逢えて変わったこと」本編です。

今回の話は、現在kindleで出版したものより先の話の世界観も含めてのものです。現在kindleで出版したものは、プロローグ的な部分になります。

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