kindleで2024年11月30より読むことが可能です。90日間の無料期間があります。
あまり長くなく、するっと読めるのではないかと思います。
どのような形でkindleで表示されるのか実はまだ分からないので、
手直しをしていくかもしれません。
表紙は無料のものを使って作成しました。
来年には他の更に長いラノベ系のファンタジー小説を出版する予定です。
他の方たちに手伝ってもらって、出版へと向かっているところです。
kindle「子犬を拾った僕の劇的な一週間」URL→https://www.amazon.co.jp/dp/B0DNNCZXJK
何故かこのURLでうまく飛べません。実際の販売日になったら、またお知らせします。
以下は『子犬を拾った僕の劇的な一週間の最初の一部分です』(kindleでは縦書きとなります。)
小さな頃、僕の家には犬がいた。甲斐犬といって、その黒トラ毛の犬がいた。のちに調べたところ、甲斐犬は飼い主にすごく忠実だけど、その分飼うのは難しいそうだ。
でも、この甲斐犬と僕は、仲良しだった記憶がある。すごく僕に優しくて、面倒を見てくれていた感じかな? でも、僕が小学校に上がる前に、死んでしまった。今はなんて名前だったかも、何故か思い出せない 。
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学校帰りに、道の隅の段ボール箱の中に、子犬が捨てられていた。日本犬っぽくて、毛は薄い茶色で、お腹の辺りは白かった。子犬と言っても、割と大きめだから、大型犬かもしれない。僕が見ると、目が合ってしまって、そこを離れるに離れられなくなった。
試しにしゃがんで、頭を撫でてみる。毛は思っていたより、ずっとフワフワで、僕の胸の中にも、そのフワフワが広がっていくようだった。
「お前、行くとこがないんだな………捨てられちゃったんだもんな………僕と同じだな」
お母さんも、昔いた甲斐犬をかわいがっていたように、思う。だから、犬が苦手って訳ではないはずだ。問題は、お母さんが連れてくるかもしれない男だ。次は、どんな奴を連れてくるかも分からないし。
でも、お母さんは、数日前から家に帰ってきていなかった。お金だけおいて、しばらく一人でやっていてと言って、帰ってこない。こんなことはよくあることで、まず一週間は帰らないだろう。
僕は、その子犬を抱き上げた。子犬は、大人しく僕の腕の中に納まった。家まですぐだったから、僕は子犬を抱きながら走って家に帰った。
お父さんは、三年前に死んだ。老人が運転する車が事故を起こして、それに巻き込まれたから。見ていた人の話では、赤ちゃんを抱えた女の人を車から救って、その代わりに自分がはねられたみたいだ。
運転をしていた八十歳近い男の人は、認知症になっているとかで、大した罪にもならなかったときいた。でも、そのせいで、僕の生活はものすごく変わった。
時々遊びに来ていた、お父さんの方のお祖父ちゃんとお祖母ちゃんは、全くこなくなった。お父さんを思い出すと辛くなると言って、こなくなったみたいだ。
僕は、お父さんによく似ているみたいで、お母さんは最初の頃、よく僕の顔を撫でまわしていた。それも少し気持ち悪かったけど、いつの間にか、あまり家にいなくなって、時々知らない男を連れてくるようになった。二人がやっている声が、家中に響いていたときは、本当に地獄だった。
お金は、お父さんの死亡保険が沢山降りたみたいで、お父さんが死んで間もない時に、お母さんが働かなくても生活はできるって言っていた。
もう中学二年になった僕は、お金さえもらえれば、お母さんが家にいない方が気楽だと思っている。それに、今、僕には家族ができた。
家に着くと、子犬を風呂場に運んだ。僕は、急いで自分の着替えとかを用意した。子犬を洗って、僕も一緒にお風呂に入ろうと思ったから。
僕が用意している間、子犬は全く動かないで、いい子にしていた。
「お前、かしこいな! 今綺麗にしてやるからな」
シャワーでお湯をかけてやると、子犬は気持ちよさそうにしていた。
「犬用のシャンプーなんてないから、僕のシャンプーでいいか?」
「クンクン」
まるで、僕の言葉が分かっているかのように、子犬は答えてくれる。僕は、ますます嬉しくなった。
「そうだ、お前に名前を付けなきゃな‼ どんな名前がいいかな?」
僕は、少し考えてパッと思いついた名前を口にした。
「武蔵ってのは、どうだ?」
すると、子犬は微かに首を横に振った。少し驚いたけど、僕は続けた。
「じゃあ、小次郎!」
また子犬は、首を振る。
「アハハ、宮本武蔵と佐々木小次郎だもんなぁ~。やっぱ駄目か。じゃあ、弁慶は?」
「クンクン」
「アハハ、じゃあ、これに決まりだな。お前は弁慶! 義経を守った弁慶みたいに、僕の側にいて、僕を守ってくれよな」
「クンクン」
「マジになるなよ! お前のことは、僕が守る。お前は、まだ小さいもんな」
お風呂から出ると、僕はまず弁慶の身体をバスタオルで拭いてやる。途中、弁慶は身体を震わせて、水しぶきを飛ばしてきた。
「おい、やめろよ」
僕はバスタオルで防御して、笑いながら弁慶に言った。僕の生活が、いっきに明るくなったような気がした。
僕の髪の毛と弁慶の毛を、ドライヤーで乾かしてから、僕は洗面所を出る。
「弁慶もおいで。僕の部屋に行こう」
僕の部屋は二階だ。弁慶は、僕の後について階段も器用に上ってきた。
「どうだ。ここが僕の部屋だ あ、子犬には危ないものがあるかもしれない。ちょっと待って」
すると、弁慶が、僕のズボンの裾を引っ張ってきた。僕が弁慶の方を見ると、弁慶は、首を横に振ってくる。
「なんだよ⁈ もしかして、大丈夫ってことか?」
「クンクン」
「さっきから、思っていたけど、弁慶、お前ってやっぱり人の言っていることが分かるとか? 子犬なのに………」
いや、子犬とかそういう問題でもない。
「クンクン」
「やっぱりそうなのか?」
僕はとりあえず、弁慶と部屋に入った。
「弁慶、こっちへおいで」
僕は、自分のベッドに座って、その横を叩いた。弁慶は軽くジャンプして、僕の横に着地した。僕は、凄く驚いた。
「弁慶‼ お前はやっぱり、普通の犬じゃないんだな」
僕は、胸がドキドキしてきた。まるで、漫画や小説の主人公になったような気分だった。
「弁慶、お前は、他にはどんなことができる?」
弁慶は、首を傾けた。でも、次の瞬間に、弁慶はピクッと何かに反応した。
「ただいま~。海司いるんでしょ~」
「お母さんだ……」
僕は少し慌てた。だって、弁慶が僕の部屋にいるから。でも、弁慶は、きっと普通の犬じゃないはずだ。
「弁慶、鳴いたり、音をたてたりしちゃ駄目だぞ。後で、ミルク持ってきてやるから」
僕は、自分の口の前で人差し指を立てて、シーってやりながら、部屋のドアを閉めた。弁慶は、僕のベッドでそのまま座っている。
僕は部屋を出ると、階段をおりて、リビングへ向かう。大抵、お母さんは帰ってきたら、そこのソファの上に座るから。お母さん、一人だといいな………。
僕が、リビングのドアを開けて中に入ると、お母さんがこっちをチラッと見た。
「ああ、やっぱりいたのね。ちょっと、何か飲み物持ってきてくれない? 喉渇いちゃって」
これも、いつものことだ。何か飲み物と言われたときは、冷蔵庫に入っている麦茶で大丈夫だ。でも、ビールだとか、他のものを欲しがるときもある。その時は、自分が欲しいものを言ってくるけど、僕はビールをいつも冷やしておかなくてはいけない。いつ帰ってくるか分からないお母さんの為に………。
僕は台所に行って、冷蔵庫から麦茶を出し、コップに入れた。それを持って、お母さんのところへ戻り、麦茶を手渡す。
「ああ、ありがとう」
お母さんは、それを一息に飲み干す。今日は天気がいいから、外が少し暑かったのかもしれない。
「ん」
お母さんは、空のコップを僕に差し出す。僕は、黙ってそれを台所の流しに片付けてから、またお母さんのところに戻る。
「あら? おかわりはどうしたの? 気が利かない子ねえ、まったく」
「ああ、ごめんなさい」
僕は、直ぐに台所に行き、別のコップに麦茶を入れて、またお母さんに手渡す。お母さんは、今度は半分くらい飲んで、目の前のローテーブルの上に置いた。
「はい、これお金よ。またしばらく帰ってこないから。わざわざあなたにこれを渡す為に来てあげたんだから、感謝しなさいよ」
「ありがとう」
僕は、封筒のお金を受け取る。
「じゃあ、もう行くわね」
最近は、この家にお母さんが泊まっていくことは、ほぼほぼない。前に男を連れ込んで、この家にしばらく滞在したときに、僕が切れてしまってからだ。
あの日々は、本当に酷かった。学校から帰ってくると、家の中はお酒とたばこの匂いで充満していた。汚れた洗濯物やゴミが辺りに散らばり、毎日僕がそれを片付けていた。
食事はお母さんが作ることもあったけど、大抵は僕が作らなくては駄目で、僕が注文されたようにうまく作れないと、外に買いに行かされた。
お母さんが男を連れてきて、五日が過ぎたころ、僕が部屋で宿題をしていると、男が勝手に僕の部屋に入ってきた。そして、僕の部屋を勝手にいじり始めた。僕は早く出ていけと心の中で思うしかなかった。だって、男の身体は大きくて怖い雰囲気だったし、それ以前にお母さんの他の相手に、意味もなく叩かれたことがあったから………。
「なんだよ、これ、お前の父親か?」 僕は、ハッとして男の方を見た。勝手に、僕の本棚からアルバムを出して見ている。
続きは、kindleを読んでいただけると嬉しいです。